serow.gif (1111 バイト)アレ?、セローって2ストだったんですか?
<日本最北端でバイクを壊される>

長期のツーリングを行っていると走行距離も長くなり、あなたの相棒であるバイクにも色々なメンテナンスが必要になってきます。特に、小排気量の4スト・バイクではツーリング中にオイル交換が必要になることがあります。しかし旅先でオイル交換を頼んだ店で、まさかバイクを壊される事になるとは...

「アレ?、セローって2ストだったんですか?」
真夏の昼さがり、東北のとあるドライブインで見知らぬライダーが後ろから声を掛けてきた。
彼は、荷台にくくりつけられた大量の荷物の一番上に乗せられた「オイルの入ったコーラの1リットル・ビン」を指してそう聞いてきた。

「いやー、じつはこれには深い訳があってね...」、そう言った後、わたしはここまでに至る物語を彼に聞かせてあげる事にした...

★これは学生生活最後の年に約一ヶ月間、北海道をバイクで放浪した時のお話。

北海道を林道ざんまいとキャンプでぶらぶら走り回ってもうすぐ一ヶ月。そろそろ畳と布団が恋しくなって、お金も底を突いてきたころ。
「さーてボチボチ大阪に帰るかな〜、でも今年はまだ宗谷岬は行ってないなー。よし、最後に日本最北端の碑で写真を撮ってから帰るとしよう!」

そう決めた私は、紋別市を出てオホーツク海を右手に見ながら退屈な国道238号を北へ走り出した。昨日の知床から、明日、あさってまで右手に海を見ながら同じ景色の中をずっと走る事になる。
「まーのんびり行くとしよう」そう思って走っていてふと気がついたのは、大阪まで帰る前にエンジンオイルを交換しなければいけないということ。もうボチボチ交換距離だし...

それじゃー日本最北端の町、稚内でエンジンオイルを交換して帰ろう...、そう安直に思いついたのがそもそも、ケチのつき始めだった。
最北端の碑に寄った後、稚内の町でヤマハのバイク屋さんを探したがなかなかみつからず、見つけた店もあいにくお休み。「仕方ない、札幌でメンテナンスをしよう」、と思って走り出したところに...ありました。

全国チェーンの某カーショップが...。いつも友人と車のオイルや用品を買いに行っていたチェーン店だったので特に何も考えず店に入り、「バイクのオイルも交換してもらえるのかな?」と訊ねると元気よくOKの返事がかえってきた。
「それでは」、とお願いして北海道で人気のカー用品を研究(笑)しようと店のなかと外をぶらぶらしているとすぐに良い時間になった。
もう出来たかな?と工場をのぞくと我がセローに3人掛かりで何やらゴソゴソ。どうやらオイルを抜くドレーンボルトがどこか分らない様子。

オイオイ、と思いながらアンダーカバーのはずし方とドレーンの場所を教える。オイルの交換だけはいつも自分でやっていたのでこれだけは自信を持って教えられる。
それにしてもカーショップでバイクの作業を頼んだのは無謀だったか?と不安になってきたがここまで来ては仕方が無い、なんせ金は前払いでしっかり払った後なのだ。

もう一度店の周りをぶらぶらして戻ってくるとアンダーカバーを取り付けている最中。どうやら無事に終わったようだ。バイクを受け取り、これからの長い帰路への走行を開始した。

当日の記録(笑)

紋別.BMP (70806 バイト) 海を見ながらのんびり走る。「そうだ、宗谷岬をまわって帰ろう」
そう思いついたのは、偶然か必然なのか?
(国道238号、紋別付近)
宗谷岬.BMP (61998 バイト) ここに来ないと北海道ツーリングのけじめがつかない?!
日本最北端の碑に立ち寄った。
<日本最北端の碑>
北緯45度31分14秒。碑は北極星の一稜を型どった三角錐をデザインしたもので、中央にあるNの文字は「北」をそして台の円形は「平和と協調」を表しているそうです。(出典:日本最北端給油証明書、安田石油店発行より)
みなさんのお手元にも2〜3枚はあるのでは(笑)。

毎年元旦に、この岬に集まってくるライダーも多いそうです。
私も以前、自転車にIRCのスパイクタイヤをつけて冬の北海道を走ろうと計画した事がありました。が、残念ながら計画倒れに終わってしまいました。ハハハ。
あ〜、いつかはやりたいな〜。
オロロン.BMP (70806 バイト) 利尻島を右手に見ながらオロロンラインを南へ走る。
利尻富士はあいにく雲の中、残念。
ひたすら直線の続く(約30km)この道で、足の遅いセローではいつまで経っても景色が変化しない。

最初はのんびり走っていたが、今日中に小樽まで走って勝納臨海公園へ行けば誰か知った顔がいるかも?、と思い途中から一気にペースを上げた。
吉里吉里.BMP (65102 バイト) 羽幌の吉里吉里でコーヒーブレイク。記念写真を撮ってもらった。
アルバムをまた見に行かなければ.....いつかそのうち。
サンセッ.BMP (60894 バイト) そろそろ日も傾いてきたがもっと距離を稼ごう、と走っていると、「サンセットビーチ・キャンプ場、こちら」の看板が。
バイクを停めて海を見ると「なるほど!」、日本海に沈む見事な夕日。何か運命的なものを感じた(笑)私は、予定より早く本日の移動を中止し、ここでキャンプする事に決めた。

最初は、少しくらい遅くなっても小樽まで一気に走る計画だったがここで止まって良かった。もしそのまま走りつづけていたら途中の雄冬海岸のあたりで真っ暗な中、エンジンが焼き付いて立ち往生していたかもしれない。ゾ〜。

ビーチに降りて海と夕日の写真をぱらぱら撮った。分厚い雲と180度見渡せる水平線の間から太陽の光がキラリと差し込んでいた。そのあとは次々と色が変化して行く極彩色のパノラマがいつまでも続いた。

キャンプ場といってもだだった広い砂浜に、一本のシャワーとひとけの感じられない海の家があるのみ。
シャワーを見ると「一回百円」の文字が。あとで風呂がわりにシャワーでも浴びるか....

砂浜の真ん中にテントを広げ荷物を放り込む、こういう風があってペグの効かないところではポールを立てる前に、まず荷物を放り込んでテントを飛ばされないようにする必要がある。

セローから全ての荷物をおろして軽くなったところでツーリング中に毎日行う簡単なメンテナンスを始める。
まずタイヤの空気圧を目視点検、OK。ストップランプとウインカーの点灯は、OK。
軍手をはめスタンドのある左側にセローを傾け、後輪を持ち上げてタイヤを回しながらチェーンにグリスをスプレーする。書くと長いが実際にやってもバランスと手際が要求される。(笑)
そして最後にざっと全体をチェック。OK....いや、アンダーカバーにオイルのにじみが。
「ちゃんと拭いとけよな!」、大阪に帰ってから清掃する事にして点検を終了した。

翌朝、テントから這い出すと気持ちの良い晴天だった。もう8月も終わり。北海道の空は少し秋の気配が感じられた。撤収前にぶらりとバイクを見に行くと....なに?!!、エンジンの下に50cmほどの大きさの油のしみが広がっていた。「バカヤロー、きちんと締めなかったな!!」、完全に頭に来つつ工具をとりにテントへもどる。

ロングツーリング中はパンクとオイル交換と簡単な調整が出来るぐらいの工具は持ってきている。
さっそくアンダーカバーを取り外しドレーンボルトを回すと...何やら柔らかい感触。緩んでいるのとは明らかに違う中途半端な重さでまわる。「大ボケめ、壊しやがったな〜!!!」
ぶちキレたが、すぐに「こんなところでどうしよう」と思い一気に不安になってきた。

なにがどう壊れているのか?、それが分らない。
ボルトが緩んでいるだけではもちろん無い。ボルトは鉄だからそう簡単に壊れるものではない。そうすると....アルミのクランクケースをねじ切られたか?
適正トルクを無視した馬鹿みたいな力で締め付けたか、斜めにボルトを入れてネジ山を壊したにちがいない。
これ以上さわって収拾がつかなくなると困るのでアンダーカバーを元にもどした。
「あー、あんな店でバイクを触らせるんじゃなかった...」、ゴメンよセロー。この仇はきっと...

じっとしていても仕方が無いし、あの店が開くまでにはまだ時間がある。
とりあえず走れるようにと、補充するためのエンジンオイルを買いに行く事にする。
前夜一緒にビールを飲んだZX10のお兄さんがタンデムで近くのガソリンスタンドへ乗せていってくれた。
さすがはリッターバイク、その凄まじい加速。昨日オロロンラインで60+(ヒミツ)km/h出したといっていたがホラでもなさそうだ。いやいや、感心している場合ではない。

さて、スタンドでオイルを買おうとしてハタと困った。4リットル缶は大きくてもうこれ以上とてもセローに積めない。それにキャップが貧弱でいつ開くか分らない。
1リットル缶はコンパクトだが工具で穴を空けてオイルを出す構造なので、途中使いかけで密封できない。
困った困った。しかしここでZX10のお兄さんが名案を出した。
「ジュースのビンに入れれば良い、キャップもしっかりしているし」、さっそくAコープに寄ってもらいコーラの1リットルを購入。ファンタと違いビンの中央がくびれているので荷作りヒモもかかりやすいはずだ。

砂浜に戻ってZX10のお兄さんに御礼を言ってからコーラを二人で飲み干した。ゲップ。朝からキツイな...
さっそく最初の缶を開けセローに入れる。700cc入って適量になった(交換時で1000cc)、ヤバかった。
ビンを洗って残ったオイルを入れる。もう一本の缶はバックの中へ。

さて、ようやく電話を掛ける時間だ。まず、大阪にある自分がバイクを買った店に電話した。「それはヒドイ!」とおやじさんは激怒してくれたが助けには来てもらえない。「見ないと分らないがそっちでクランクケース交換なら半月は掛かるだろう」、との返事をもらった。
次に、昨日の店に電話。交渉の結果修理代を持ってもらう事になった。(当たり前だ)
あっさり了解したが、何か心当たりでもあったのか??今になって思う。

やれやれ、気が抜けた。とりあえずオイル量を気にしながら大阪まで走るとするか...
ツーリング中のオイル補充と、オイル缶を持ち歩くのが嫌で4ストのセローを買ったのに。
これじゃー、DT50でツーリングしていたころに逆戻りだ...トホホ。

町の外れまでZX10のお兄さんが伴走してくれた。ホーンを鳴らしてお別れの合図。
カン、カン、ビュイーン。ZX10はフル加速であっという間に視界から消え去った。「リッターバイクのフル加速を見たい」という私のリクエストに答えてくれたのだ。パタパタパタ、セローはさっきとほとんど同じところを走っている。

大阪まで.....遠いな〜。
結局、大阪に帰り着くまでに4リットルのオイルが消費された。

ツーリング心得:ツーリング中のバイクのメンテナンスは信頼のおける専門店にまかせましょう!!
全国チェーンの某カーショップ
まともな仕事しろ!!!

<<キャンプ、林道ツーリング中にあなたが遭遇したトラブルについてお聞かせください>>
事故、故障、転落...あなたが林道キャンプ、ツーリング中に遭遇した考えられないような出来事、トラブルについての体験、失敗談、などなど、なんでもけっこうです。
貴方のとっておきのネタ、おはなし、お待ちしております。

ICA03706@nifty.com 2輪、4輪 林道ツーリングガイド編集室


★次の与太話へ

トップページご案内与太話林道ガイド取り締まり情報日本のみち林道Q&Aモーターショーリンク